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裸の歯

「目に見える形で反論を提示する」に反論する

 調べ直した結果、国ごとに強姦の定義が違うため、集計自体が無意味だと分かりました。セクハラや痴漢などを強姦に含む国や、同性間、女性から男性、性器以外を用いる性的行為などを含む国もあるようです。
 ちなみに、日本は最も定義が狭い国(「男性が」性器を女性の性器に挿入する)とのこと。痴漢や盗撮という言葉は日本以外にはない(強姦とかその他の犯罪とかに含まれる様子)という話も聞きました。

 この定義の狭さ、および暗数の高さから、日本は性犯罪が相当多い国ではなかろうか、と思うようになりました。
 英語は苦手なので、レイプの定義やその他の性犯罪の文章は訳せません。だれか詳しい人がいたら教えを請いたいです。
 わたし自身が理解できるまで、以前の文章は残しておきます。

世界的な統一統計規格が欲しいです。実態がさっぱりわからない。

 以下旧バージョン。

「目に見える形で反論を提示する」に反論する

 このたびは、「山本弘のSF秘密基地BLOG」中の記事『「非実在青少年」規制:目に見える形で反論を提示する』について、疑問に思うことがありましたので、転載自由とのことでしたので、このような記事を書いてみました。
 この場をお借りしまして、深い感謝の意を述べさせていただきます。
 なお、このページは、他の当サイトのページと同じく、リンクは連絡不要、文章の引用、転載も、出所のページを明記する場合に限り自由、とさせていただきます。

 まずは、記事を読んだときに感じた違和感から。
 犯罪の発生率については、順位ではなく、数値そのものを使うべきではないかと思いました。
 65ヶ国中65位でも1位との差が1.1倍では意味がないし、10位でも9位との差が2倍なら差があるとみなすべきだと、わたしは思います。

 なお、性犯罪の発生率については、隠蔽される犯罪が多い、つまり暗数(犯罪の隠蔽率)が大きいことを考慮する必要があります。加えて、国によって暗数が大きく異なることも考えなければなりません。たとえば、「日本では海外諸国より性犯罪が犯罪として認知されにくい」こととか、「日本は被害者が被害を公言しにくい」ことなどが予想されます(ももち麗子先生の「問題提起作品集」を読む限りでは、ですが)
 ですが、海外諸国にも隠蔽されている性犯罪は存在します。
 ですので、統計データをそのまま信じるしかない、と割り切るのも考え方のひとつです。ただ、暗数による修正を加えた値を、本来の発生率だと仮定して判断することも、考慮したほうがいいと思います。
 ただし、暗数については、客観的なデータが無いので、主観的に決めるしかありません。調査結果は存在するものの、調査機関によって値がまちまちなので、何を信頼していいのかがわからない、というのが実情です。
 加えて・・・今回用いた(山本氏も引用していた)統計サイト「NationMaster」で上げられているのは「レイプ」のみのデータであり、「セクハラ」などを含んだ性犯罪全体に対する統計が存在しないのも難しいところです(国によって定義が違うのでまとめようが無い)
 前置きはここまで。ここからはわたし個人の主観を交えつつ、語りましょう。

人口1000人当たりのレイプの件数

http://www.nationmaster.com/graph/cri_rap_percap-crime-rapes-per-capita
日本は65ヶ国中54位。韓国16位、イギリス13位、アメリカ9位、カナダ5位。

[表部分はスクロールが可能です]

件数倍率順位
日本0.017737154/65
韓国0.126217.1216/65
イギリス0.1421728.0213/65
アメリカ0.30131816.999/65
カナダ0.73308941.335/65

 レイプの暗数については調査機関ごとに差がかなりあるようで、日本の暗数は「配偶者からの暴力被害者支援情報」の調査結果のうち、最新のデータである異性から無理やりに性交された経験(PDF)では「警察に連絡した人が全体の4.1%」(平成20年10月~11月、社団法人中央調査社)とあるので暗数95.9%であり、「平成18年版 犯罪白書」の第1節 性犯罪の概況では「被害を捜査機関に届け出たと回答したのは4人(14.8%)」(平成16年、法務総合研究所)とあるので暗数85.2%でした。
 4年しか間が無いのに10%以上も差があるのでなんとも言えないのですが、仮にこのサイトでは間を取って、暗数91%としておきます(本当の中間は90.55%ですが、厳しくて新しいほうにわずかに寄せました)
 ですので、補正済発生件数は0.017737÷9%=「0.197078」になります。
 Rape, abuse & incest national networkによると、アメリカでは60%が報告されていない(暗数40%)らしいです。この団体以外が把握している暗数もあると思いますが、今回は仮にこのデータをそのまま信用することにします。
 すると、アメリカでの補正済発生件数は0.301318÷60%=「0.502197」となり、日本の約2.55倍となります。
 韓国についてはNAVER(ハングル版)の記事の中で「実際発生した性暴行事件の中で強姦または強姦未遂の場合申告率が7.1%に過ぎない」と書かれています(日本語文はexcite翻訳を利用)。だとすると暗数は92.9%であり、補正済発生件数は0.12621÷7.1%=「1.777606」となり、日本の約9.02倍です。2008年の記事ですが、記事中に「全国初」と書かれているので、他に使えそうなデータは無いと思い、そのまま使ってみました。
 イギリス、カナダについては、暗数に関するデータが見つけられませんでした。文化的に比較的近いと思われるアメリカの暗数(40%)を、仮にそのまま使ってみます。イギリスについてはAdult Male Survivors Of Sexual Abuse(旧AMSOSA UK)というサイトで「犯罪者の35%が告発される(暗数65%)」と書かれていますが、おそらく「子供に対する性犯罪のみ」をさすと思われ、大人を含めたものではないと思われますので、今回は不採用とします。
 イギリスでの補正済発生件数は0.142172÷60%=「0.236953」となり、日本の約1.20倍となります。
 カナダでの補正済発生件数は0.733089÷60%=「1.221815」となり、日本の約6.20倍となります。
 ともあれ、日本のレイプ件数は、統計データほど差は激しくないものの他国と比べて低い水準にあると言えるのではないか、と思われます(ただし、イギリスとの差はほとんどありません)

[表部分はスクロールが可能です]

暗数補正済件数推定暗数倍率
日本0.19707891%1
イギリス0.23695360%1.20
アメリカ0.50219760%2.55
カナダ1.22181560%6.20
韓国1.77760692.9%9.02

 「暗数」というあいまいなものを使ったデータですので、納得できない方も多いと思います。
 ですので、山本氏が補足で「ちなみに、僕がなぜ強姦だけでなく殺人の統計も示したかというと、多くの犯罪の中で、殺人の統計が最も信用できるからである。他の犯罪は、強姦と同じく、実数と認知件数の間に大きな開きがあり、実数の増加以外の要因で認知件数が上下してしまうのだ。」とおっしゃっているとおり、次は殺人について調べてみることにしましょう。

人口1000人当たりの殺人

http://www.nationmaster.com/graph/cri_mur_percap-crime-murders-per-capita
日本は62ヶ国中60位。イギリス46位、カナダ44位、韓国38位、アメリカ24位。

[表部分はスクロールが可能です]

件数倍率順位
日本0.00499933160/62
イギリス0.01406332.8146/62
カナダ0.01490632.9844/62
韓国0.01963363.9338/62
アメリカ0.0428028.5624/62

 性犯罪よりも倍率の差が小さいです。それでもイギリス、カナダ、韓国の3~4分の1というところで、やはり明らかに少ないと言えるのではないかと思います。
 ですが、これだけで終わらせても仕方ありません。調べられる限りの国について、殺人の発生比率とレイプの発生比率とを比較してみましょう。と言っても、リンク先の2つの表を比較するだけですが。

[表部分はスクロールが可能です]

国名殺人レイプ殺人1件あたりレイプ件数
オーストラリア連邦0.015032443位0.7779993位51.7548091位
カナダ0.014906344位0.7330894位49.1798092位
ニュージーランド0.011152452位0.21338311位19.133373位
アイスランド共和国0.016849942位0.2460099位14.6000274位
カタール国0.0011586862位0.013904254位12.0000345位
ドミニカ共和国0.028973328位0.347687位12.0000136位
スペイン0.012245648位0.14040313位11.4655877位
ノルウェー王国0.010668454位0.12083617位11.3265348位
セーシェル共和国0.073902517位0.7882942位10.6666759位
イギリス(グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国)0.014063346位0.14217212位10.10943310位
オランダ王国0.011153851位0.10044521位9.00545111位
デンマーク王国0.010677553位0.091494822位8.56893412位
フランス共和国0.017327240位0.13944214位8.04757813位
ドイツ連邦共和国0.011646149位0.090973123位7.81146414位
アメリカ合衆国0.04280224位0.3013188位7.03981115位
大韓民国0.019633638位0.1262115位6.42826516位
ジンバブエ共和国0.074993816位0.4577756位6.10417117位
スイス連邦0.0092135156位0.053945832位5.85507518位
アイルランド共和国0.0094621555位0.054282931位5.73684619位
チリ共和国0.01470545位0.078217925位5.31913620位
フィンランド共和国0.028336230位0.11085620位3.91216821位
日本国0.0049993360位0.01773751位3.54787522位
イタリア共和国0.012839347位0.040204544位3.13136223位
チュニジア共和国0.011215950位0.033151446位2.9557524位
チェコ共和国0.016990541位0.048823438位2.8735725位
ハンガリー共和国0.020485737位0.058858829位2.87316526位
パプアニューギニア独立国0.083859312位0.23354410位2.7849527位
香港(中華人民共和国香港特別行政区)0.0055080459位0.015074652位2.73683528位
南アフリカ共和国0.4960082位1.195381位2.41000129位
スロベニア共和国0.017901539位0.042764843位2.38889430位
マレーシア0.023003434位0.050515636位2.19600531位
ルーマニア0.025078432位0.049708937位1.9821432位
コスタリカ共和国0.06100619位0.11827718位1.93877633位
ブルガリア共和国0.044563823位0.079597324位1.78614234位
ポルトガル共和国0.023376933位0.036437645位1.55870135位
ジャマイカ0.3241963位0.4766085位1.47012336位
ギリシャ共和国0.007592858位0.010686256位1.40741237位
ウルグアイ東方共和国0.04508222位0.051229534位1.13636238位
ポーランド共和国0.056278920位0.06221828位1.10552939位
モーリシャス共和国0.02112136位0.021933450位1.03846440位
メキシコ合衆国0.1302136位0.12298116位0.9444641位
スロバキア共和国0.026330331位0.023752549位0.90209742位
サウジアラビア王国0.0039745661位0.0032932162位0.82857243位
タイ王国0.080079814位0.062630526位0.78210144位
キルギス共和国0.080256513位0.062378527位0.77723945位
インドネシア共和国0.0091084257位0.0056700359位0.62250446位
モルドバ共和国0.078114515位0.044893441位0.57471247位
マケドニア旧ユーゴスラビア共和国0.022982935位0.013202955位0.57446648位
ベラルーシ共和国0.098349510位0.051456333位0.52319849位
エストニア共和国0.1072777位0.054763730位0.51048850位
リトアニア共和国0.1028639位0.050875735位0.49459651位
ラトビア共和国0.103938位0.045414840位0.43697452位
インド共和国0.034408326位0.014318753位0.4161453位
ザンビア共和国0.07076918位0.026638347位0.37641154位
ベネズエラ(・ボリバル共和国)0.3161384位0.11550719位0.36536855位
ウクライナ0.09400611位0.024490948位0.26052456位
ロシア連邦0.2015345位0.048654339位0.24141957位
アルメニア共和国0.042574625位0.0093865258位0.22047258位
グルジア共和国0.051101121位0.010049257位0.19665359位
アゼルバイジャン共和国0.028564229位0.0037917161位0.13274360位
イエメン共和国0.033627627位0.003859760位0.11477761位
コロンビア共和国0.6178471位0.043325442位0.07012362位

 レイプ件数の順位が違うのは、殺人件数との母数が違う(65ヶ国と62ヶ国)ためです。
 数値じゃいまいち分かりにくいのでグラフにします。

殺人件数とレイプ件数との比較図
 いくつかの例外を除けば、なんとなく右肩上がり(正の相関関係)になっているように見えますが、実際はどうでしょう。

 レイプと殺人の相関係数は0.343515674で、P値は0.006266117でした。相関係数については、

[表部分はスクロールが可能です]

相関係数相関関係
-1.0~-0.6高い負の相関
-0.6~-0.4中位の負の相関
-0.4~-0.2低い負の相関
-0.2~+0.2無相関
+0.2~+0.4低い正の相関
+0.4~+0.6中位の正の相関
+0.6~+1.0高い正の相関

EXCEL計算式:=CORREL(殺人件数の範囲,レイプ件数の範囲)

[表部分はスクロールが可能です]

P値有意差(確率的に偶然ではなく、意味がある)
0.05~なし
0.01~0.05有意差あり
0.001~0.01さらに有意差あり
~0.001かなりの有意差あり

EXCEL計算式:=TDIST((ABS(相関係数)*SQRT(標本数-2))/SQRT(1-相関係数^2),標本数-2,2)(今回の標本数=62ヶ国)

という大まかな基準があり、これに沿うとレイプと殺人との統計量は0.01水準で有意であり、低い正の相関関係がある、と言えます。ひらたく言うと、「殺人が多い国ではレイプも多いとは言えるものの、例外も多く、説得力はちょっと弱め」という程度でしょうか。

人口10万人当たりの若者による殺人

http://www.nationmaster.com/graph/cri_mur_com_by_you_per_cap-murders-committed-youths-per-capita
日本は57ヵ国中57位! イギリス52位、カナダ&韓国39位(同率)、アメリカ14位。

[表部分はスクロールが可能です]

件数倍率順位
日本0.4157/57
イギリス0.92.2552/57
カナダ1.74.2539/57
韓国1.74.2539/57
アメリカ11.027.514/57

 ちなみに、この統計での若者の定義は「10歳~29歳」らしいです。
 確かに日本は若者の殺人も少ないのですが、これを殺人全体を比較してみるとどうでしょう。殺人全体のうち、若者による殺人が何%を占めるのか、の統計です。

[表部分はスクロールが可能です]

国名若者による殺人総殺人数
比率順位
アルバニア共和国181.56%1325179
アゼルバイジャン共和国91.5%2194212
チリ共和国62.12%3146235
クウェート国60.86%41423
エルサルバドル共和国56.66%511472024
パナマ共和国53.73%6151281
アメリカ合衆国50.76%7822616204
フィリピン共和国49.62%832526553
コロンビア共和国48.35%91283426539
メキシコ合衆国45.57%10599113144
ニュージーランド39.21%112051
オランダ王国38.21%1260157
デンマーク王国35.71%132056
イタリア共和国32.6%14210644
ギリシャ共和国30.86%152581
ルーマニア30.01%16169563
大韓民国29.52%17282955
コスタリカ共和国29.52%1875254
オーストラリア連邦29.13%1988302
ウクライナ28.81%2012734418
タイ王国28.32%2114565140
モルドバ共和国28.23%2296340
カナダ27.34%23143523
ロシア27.27%24788528904
ベラルーシ共和国26.99%25267989
アイルランド共和国26.31%261038
クロアチア共和国26.25%272180
ベネズエラ(・ボリバル共和国)26.05%2820908022
ポーランド共和国25.97%29186716
ラトビア共和国25.7%3055214
ベルギー王国23.87%3137155
エストニア共和国23.07%3233143
ノルウェー王国22.44%331149
キルギス共和国21.3%3488413
アルメニア共和国20.47%3526127
ハンガリー共和国20.19%3641203
リトアニア共和国20.13%3759293
日本国19.93%38127637
スペイン19.43%3996494
スロバキア共和国18.84%4026138
アルゼンチン共和国18.18%416283453
ドイツ連邦共和国17.06%42156914
ウルグアイ東方共和国16.58%4336217
チェコ共和国15.38%4436234
モーリシャス共和国15.38%45426
ブルガリア共和国15.36%4651332
ポルトガル共和国14.97%4737247
フィンランド共和国14.39%4819132
イギリス(グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国)11.57%491391201
スロベニア共和国11.11%50436
オーストリア共和国10.76%51765
フランス共和国8.65%52911051
スイス連邦7.98%5317213
スウェーデン王国7.3%5416219
グルジア1.67%554239
ジャマイカ0.22%562887

 なんで100%超えている国があるのか、というと、NationMasterで表示されているデータの、元リソースが違うからです。今回は傾向を見るのが目的なので、このまま用いることにしてしまいます。
 で、比較結果ですが・・・アメリカ、韓国、カナダよりは若者による殺人の割合が低いのですが、イギリスよりは高い、という結果になりました。
 日本における若者による殺人比率は、他の国と同程度からやや低め、だと言えそうです。
 となると、「若者に対する規制強化に大きな意味があるかどうかは疑わしい」のではないでしょうか。意味が無いわけではないと思いますけど、年齢を絞った対策よりは全年齢的な対策のほうが、より多くをカバーでき、より効果的なように思えます。

[表部分はスクロールが可能です]

若者による殺人比率倍率順位
イギリス11.57%0.5849/56
日本19.93%138/56
カナダ27.34%1.3723/56
韓国29.52%1.4817/56
アメリカ50.76%2.557/56

犯罪率の推移

 アメリカの統計が・・・どうしてもFBIやwikipediaの1976年以降のデータしか見つからなかったです。1954年に制定されて、1980年頃から形骸化したという「コミックス・コード」の影響を知りたかったんですが・・・
 日本みたく1926年(強姦は1933年)からデータが残っていれば色々調べられたのですが。

[表部分はスクロールが可能です]

人口10万人あたりの暴力犯罪の発生率日本の
有効求人倍率
年度アメリカ日本
殺人レイプ殺人レイプ
1926--4.14--
1927--4.05--
1928--3.75--
1929--3.25--
1930--3.59--
1931--3.69--
1932--4.06--
1933--4.022.35-
1934--3.802.19-
1935--3.592.16-
1936--3.552.28-
1937--3.152.19-
1938--2.761.81-
1939--2.371.71-
1940--2.101.58-
1941--1.971.41-
1942--1.611.59-
1943--1.502.15-
1944--1.252.18-
1945--1.271.83-
1946--2.360.81-
1947--2.481.10-
1948--3.122.42-
1949--3.323.34-
1950--3.444.23-
1951--3.393.87-
1952--3.354.35-
1953--3.384.04-
1954--3.494.70-
1955--3.404.49-
1956--2.904.16-
1957--2.784.53-
1958--2.925.93-
1959--2.906.63-
1960--2.816.73-
1961--2.786.88-
1962--2.476.44-
1963--2.376.490.70
1964--2.437.060.80
1965--2.316.700.64
1966--2.226.650.74
1967--2.116.381.00
1968--2.176.061.12
1969--2.055.541.30
1970--1.904.931.41
1971--1.834.581.12
1972--1.914.351.16
1973--1.883.831.76
1974--1.733.581.20
1975--1.873.310.61
19768.826.61.872.860.64
19778.829.41.782.580.56
19789.031.01.622.510.56
19799.734.71.602.420.71
198010.236.81.442.230.75
19819.836.01.492.240.68
19829.134.01.492.020.61
19838.333.71.461.650.60
19847.935.71.461.600.65
19857.937.11.471.490.68
19868.637.91.381.440.62
19878.337.61.301.490.70
19888.537.81.171.421.01
19898.738.31.061.261.25
19909.441.11.001.251.40
19919.842.30.981.291.40
19929.342.80.991.211.08
19939.541.10.991.290.76
19949.039.31.021.290.64
19958.237.11.021.190.63
19967.436.30.971.180.70
19976.835.91.021.310.72
19986.334.51.101.480.53
19995.732.81.001.470.48
20005.532.01.101.780.59
20015.631.81.051.750.59
20025.633.11.101.850.54
20035.732.31.141.940.64
20045.532.41.111.700.83
20055.631.81.061.620.95
20065.731.01.021.521.06
20075.630.00.941.381.04
20085.429.3--0.88
2009----0.47

日米の殺人件数とレイプ件数
 アメリカの犯罪については、殺人は1991年から1999年まで着実に下がった後で伸び悩み、レイプは1990年頃からゆるやかに減り続けているのが分かります。
 「コミックス・コード」の形骸化の影響、と呼ぶには遅すぎる変化だと思います。それよりは、総合的な犯罪対策のほうが効果が大きいのではないでしょうか。それに、「形骸化」というのは、一応はまだルールは残っているわけで、影響がゼロに戻るわけではないですし。
 ちなみに。なぜグラフを対数表記しているのかというと、「変化した倍率」を分かりやすくするため、です。実際は2001年から2002年の間にレイプ件数は増えているのですが、わずか4%の違いです。しかし、普通のグラフにすると1.3ポイントの増加なので、かなり目立ってしまいます。

日本の犯罪件数と求人倍率
 一方、日本の変化について。こちらからは、1937年から下がり続けてきたレイプ件数が1942年から1943年にかけて急増し、1946年に強姦が急減、1947年~1950年にかけて急増し、1958年~1959年に再度急増、1964年から下降を続け、1997年から2000年にかけて急増、2003年から下降し始めたことがわかります。
 これは、どちらかといえば戦争や景気による影響が強いのではないかと思われます。内閣府の景気統計のうち、景気動向指数研究会から景気基準日付を参照してみてください。
 1945年後半~1950年前半は戦後混乱期にあたります。その後朝鮮特需、神武景気を経験した後に、1957年後半~1958年前半はなべ底不況(デフレーションを伴う不況)。バブル景気崩壊は1991年初頭ですが、大型企業倒産・銀行破綻が相次いだのが1997年、雇用者賃金の低下や正社員の減少が始まったのが1998年。アメリカ同時多発テロ事件や小泉内閣の発足が2001年で、実際にはまだ不況が続いている時期ではありましたが、この頃は「日本が変わる」という期待感があったように思えます。
 景気動向を示す指数として、一致指数の1つである有効求人倍率をあててみました。有効求人倍率は、GNPやGDP(国全体、および1人当たり)に影響されずに過去と比較ができる指標なので、採用してみています。1975年以降であれば、負の相関関係があるように思えます(1963年~1973年の間にも負の相関関係がありそうです)
 レイプと有効求人倍率の相関係数は-0.415350427で、P値は0.016228779でした。標本数は33(1975年~2007年)としています。
 これに沿うとレイプと有効求人倍率との統計量は0.05水準で有意であり、中位の負の相関関係がある、と言えます。ひらたく言うと、「有効求人倍率が下がるとレイプの発生率が上がる可能性はある程度高いが、ただの偶然である可能性もある」という程度でしょうか。
 ちなみに、前年の有効求人倍率との比較では、相関係数は-0.465969837、P値は0.007190661、標本数は32(レイプ1976年~2007年、有効求人倍率1975年~2006年)となり、より相関性が強くなるように思えます。

結論

 長々と書いてしまいましたが、今のところの結論としては、以下の2つです。
 結局、反論にはなりませんでしたね。
 仮に2番目が正しければ、規制よりも景気対策(雇用対策)を優先することが必要になるでしょう。

  1. 「非実在青少年」に関する規制を行っても、性犯罪が減るとは限らない(少なくとも、日本より規制が厳しい国での性犯罪は日本と同様かそれ以上に多いと推測できる)
  2. ただの偶然である可能性もあるが、景気(有効求人倍率)が下がると、性犯罪(レイプ)の発生率が上がる可能性が高い

参考資料

山本弘のSF秘密基地BLOG
「非実在青少年」規制:目に見える形で反論を提示する
「目に見える形で反論を提示する」:補足
「あなたは悪くない」別館
日本の性犯罪はあまりに多く、ただ隠蔽されているだけです。
配偶者からの暴力被害者支援情報
男女間における暴力に関する調査(全文)
平成18年版 犯罪白書
第6編/第4章/第1節 性犯罪の概況
相関関係の有無の判断
小林和広(島根大学 生物資源科学部 農業生産学科 作物生産学研究室) > 実験計画学(2009年度版) > 第12回 相関分析
NationMaster
Rapes (per capita) (most recent) by country
Murders (per capita) (most recent) by country
Murders committed by youths per capita (most recent) by country
Murders (most recent) by country
Murders committed by youths (most recent) by country
Rape, abuse & incest national network
Reporting Rates
NAVER
性暴行、公式統計より110倍たくさん発生
AMSOSA UK → Adult Male Survivors Of Sexual Abuse
HOW PREVALENT IS CHILD SEXUAL ABUSE?(現在見つかりません)
Wikipedia
日本の犯罪と治安
アメリカ合衆国の犯罪と治安
有効求人倍率
景気動向指数研究会
景気基準日付

最後に、わたし個人の態度を

 最後に、わたしの個人的な態度を表明します。
 わたしがこれまで『東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例』に反対してきたのは「マスコミの報道では性描写規制のことしか言っていない」が、実際は「不健全」なあらゆるもの(暴力、魅力的な悪役、権力との戦いなど)を規制できる条例だからです。しかも今回の規制には単純所持の禁止も含まれるという、当局者のコメントも存在します。
 現実社会が「しばしば悪党が勝利することもある世界」なのに、フィクションでそれを描くのを禁止したらどうなるか。「勝利している存在は間違いなく正義である」と勘違いする人が増えるのではないか、と思っています。
 現実社会で「悪」と呼ばれる側にも、彼らなりの主義主張があり、「彼らが正義だと信じていること」に沿って行動している場合があります。「力の強い側、権力者側こそが悪」である可能性もあります。もちろん、単純な悪党も存在しますし、自分の主張を通すために法を犯すのはよくないことです。
 「力」がある側が常に正しいわけではない。「悪」と呼ばれる側が常に悪いわけではない。話し合ったり、考えたり、力以外の方法で不具合を解決できる手段を持つのが「人間」という生き物です。だからわたしは、個人から考える心を奪う規制に反対します。「思想・良心の自由」を奪うな、ということです。

 なお、性的な描写に対する規制は、出版倫理協議会などの既存の組織を通さずに出版されることが無くなるような規制にしてやるべき、というのがわたしの持論です(同人誌についてはまだ固まった思想を持っていません)。BLやTLにも成人指定マークをつける必要はあると思っていますし、お酒やタバコのように未成年への販売を防止する指導も必要だと思います。
 未成年に対する性的な行為や、未成年自身が性的な行為をすることを推奨するような作品は、自重されるべきだとも思っています。思春期の未成年自身が性的な興味や欲求を持つことは自然なこととはいえ、性行為そのものを行うのは条例で禁止されているわけで。ただし、上手に発散するための手助けは必要だろうと思います。溜まった性欲が暴走することのほうが、悪影響はよほど大きいのですから。
 現状で問題なのは、漫画やライトノベル、アニメなどの倫理を自主管理すべき団体であるはずの「出版倫理協議会」がまともに動いていない印象があることなのかな、と思います。「ソフ倫」「映倫」「ビデ倫」に相当する機関が漫画や小説などには「個別には」存在しない、というのは調べてみて驚きましたが。
 為政者側から命令されるのがイヤなら、自主的に明文化した、なるべく穏やかな倫理規定を作るべきでしょう(日本版「コミックス・コード」と非難されそうではありますが)。そしてそれは、既にそれを行うことができる機関が存在するのですから、新たに規制のための機関が作られるべきではないと思います。

「出版倫理協議会」の今後の活躍に期待しております。

[最終更新日 2015.7.15]