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裸の歯

人口減少と高齢化について

 この話は、前佐賀市長「木下敏之」さんのスピーチを元に、僕自身の独自の解釈を加えて書いています。

将来推計人口データベース

 日本は人口減少時代に入り、今後数十年にわたって人口が減りつづける、という状況になりました。出生率が上がれば人口が増えるのか、というとそうでもなく、今この瞬間に出生率が2.1(人口を維持出来る水準)まで回復したとしても今までの蓄積の影響で十数年程度は人口は減りつづけます。出生中位、死亡中位の場合の日本全体の人口推移では、総人口は1億2800万から9000万、労働者人口(15歳から64歳までの人口)は8400万から4600万へ減ります。
 日本全体の人口推移(出生中位・死亡中位)

 仮に国全体の人口が増えたとしても、過疎化と過密化は進んでいきます。将来推計人口データベース(現存していません)というサイトで、自分の住む自治体の将来の人口を推計してみてください。大抵の自治体では人口が大きく減少していくことが確認できます。
 操作方法ですが、画面やや下側の「小地域簡易将来人口推計システム」ボタンをクリックします。画面上側で「市区町村選択」が選択されていることを確認したうえで「実行」ボタンをクリックします。画面上側に「都道府県」を選択するメニューが表示されるので、選択して「実行」ボタンをクリックします。都道府県のすぐ下に「市区町村」を選択するメニューが表示されるので、選択して「実行」ボタンをクリックします。「人口の検索を行います。」というメッセージが表示されるので「OK」ボタンをクリックします。画面中ほどに「表をスクロールして末尾の入力欄に推計パラメータを入力して下さい。」と表示されるので、下までスクロールさせます。「何年まで推計しますか?」の欄には「2055」年、「最終の合計特殊出生率は?」の欄には「2000年の合計特殊出生率は?」と同じ値を入力します。もちろん、ここの値を変えてやればいろいろな推計を試すことができます。値を入力したら「推計開始」をクリックします。すると推計結果が表示されます。「折れ線グラフ」ボタンをクリックすると人口推移グラフが、「人口ピラミッド」ボタンをクリックすると人口ピラミッドが表示されます。

 ではここで一例を。僕の現住所の東京都板橋区と、実家の北海道札幌市との2055年までの推計人口を出してみました。出生率は2000年の時からずっと変化しない(板橋区1.09、札幌市1.07)と仮定しています。どの地域も出生率は2.1を下回っているので人口が自然増する事はありえず、人口増は他の自治体からの流入が原因になります。

 板橋区の人口推移
 2055年の板橋区の人口ピラミッド
 板橋区は2005年の時点で人口が減少し始めており、2055年まで減りつづけています。労働者人口が総人口とほぼ同じ数だけ減っているのがわかります。総人口は51万強から28万、労働者人口は37万から15万弱まで減ります。2055年の人口ピラミッドは85歳以上の人が一番多く、ピラミッドというよりはトルネード(竜巻)です。特に20歳未満の人口が低くなっています。

 札幌市の人口推移
 2055年の札幌市の人口ピラミッド
 札幌市は2015年頃までは人口が増え、その後減少しはじめます。労働者人口は2010年までは微減ですが、その後急速に減り始めます。総人口は182万から189万まで増えた後に132万、労働者人口は131万から66万まで減ります。総人口の減少より激しく労働者人口が減っていくわけです。2055年の人口ピラミッドは・・・女性はトルネードです。男性も70~74歳が一番多く、高齢者が多いという状況は変わらないようです。

少子高齢化の何が問題なのか

 まず少子化から。子供の数が減ることは、短期的に見ればプラスにはたらきます。児童育成のための様々な支出、例えば医療費(地域によって小学生まで無料だったり中学生まで無料だったりする)などにかかるお金が減るからです。しかし長期的に見ると将来の労働者人口が減るので、マイナスといえます。
 そして高齢化。これはマイナスしかありません。定年を過ぎると仕事を辞めてしまうため税収が減り、介護や医療費などの支出が増えます。年金だって支払わなければなりません。
 税収は払う人の年収によって決まるので人によってまちまちですが、仮に全員同額だとしておきます。すると労働者人口の増減に合わせて税収も増減することになります。高齢化についてはよく「労働者人口(15歳~64歳)の割合」「高齢者人口(65歳以上)の割合」をパーセントで表記したりしますが、これでは税収が減ることを理解するのは難しいです。人口を直接見る必要があります。
 くりかえし書きますが、労働者人口が減ると税収も減ります。人口が減少する、とりわけ労働者人口が減少するということは、所得税も住民税も減少するということです。少子高齢化の問題はここにあります。少子化や高齢化が問題、というよりはむしろ労働者人口の減少が問題なわけです。

どう対策すればいいのか

 少子高齢化が進むと税収が減ります。収入が減るときに取るべき方法は、「他の収入源を探す」か「支出を減らす」しかありません。今の日本は「借金をする」方法をとっているようですが、これではやがて自己破産してしまいます。

 「他の収入源を探す」については、「海外(域外)からの資金流入を増やす」という方法が考えられます。つまり観光などで訪れる人の数を増やしたり、株式や債券を購入してもらったり、資金融資をしてもらったりできればいいわけです。まあ債券や資金融資は借金なのでやりすぎると危険ですが。
 観光収入を増やすことについては、どの自治体でも力を入れていることだと思います。しかし大きな施設を作ればいいとか、多額のお金がかかる方法を想定しているところが多そうな気がします。個人的な意見ではありますが、これからは入場料を払う施設は流行らないと考えた方がいいと思います。昔ならともかく今は費用対効果を考えて旅行をする時代です。得られる物や体験がコストに見合わないとしたら誰もお金を払ってはくれません。まあ、何でも無料にすればいいというものでもないのですが。
 一方、「国」はあまり観光に力を入れていないような気がします。海外から日本へ観光しに来る人は増えてはきていますが、まだ少ないというのが現状でしょう。海外からの観光客を増やすためには、インフラ整備なども必要ではありますが、より重要なのは宣伝と外国語サポートです。
 宣伝については、観光局から各国のテレビや新聞などに広告を出すとか、単純にお金をかけるだけでも効果はあると思います(もしかすると既にやっているのかもしれませんが)
 外国語サポートについては、外国語の案内板やアナウンスなど既に実施されていることも多いのですが、大都市圏や有名な観光地を除けばまだ努力が必要だと感じます。もっと問題なのは店員が外国語を話せないことで、「免税店でしか買い物ができない」となると旅をしていて面白くないと思います。携帯電話が普及している今だからこそできそうなサービスとして、「声だけ通訳」サービスなんてどうかな、と思います。旅行者に通話先限定の携帯電話(子供向け携帯みたいな)を貸し出して、通訳の人に電話を通じて会話を翻訳してもらうサービスです。通訳をお供させるよりは安くできると思うし、受ける側は同時に何台かを受け持てば儲かるし、名案だと思うのですが・・・

 では、対策の本命の「支出を減らす」です。高齢者が増えるために増える出費もあるので、これもなかなか難しいとは思いますが。
 まずはインフラ整備に無駄なお金を使わないことが大切です。日本の建築関連会社は約55万社あり、世界の約4割を占めると言われるほど多いそうです(特に零細企業が多い)。なぜそんなにたくさんの会社があるのかといえば、もちろんそれを養えるだけのお金があったからです(もうかっている会社ばかりではありませんが)。しかしこれからは人口減少時代。人口が減り続けるということは必要な住宅の戸数も減り続けるということです。建築関連会社もこれからは淘汰されるべきでしょう。
 土木業界も不自然にもうかっている業界だといえます。これは道路特定財源があるせいで本来必要の無い道路の整備などが行われるためです。年末になると道路工事が増えるとは思いませんか。これは道路特定財源の予算を消化するための工事であり、この制度は今では不要のものなのです。
 次に、むやみな民営化を止めることです。民営化といえばコスト削減のための対策のひとつとして有名ですが、なぜ民営化を止める必要があるのかというと、コストがかえって高くなる場合があるからです。民間企業は公共事業とは違って利益を出さなければいけないため、普通であれば経費削減をすると思うのですが、独占事業においては料金を上げてコストを下げないことがあります。それでは困るわけです。
 例えば郵政民営化を例にとると、郵便貯金や簡易保険については民間企業と競合するサービスなので、民営化することによってコストダウンを見こめます。郵便事業については信書の配達など、郵便局にしか許可されていない事業がありました。こういう独占状態にある事業はいくらコストが高くとも利用せざるを得ないため、かえってコスト高になることがあります。定額小為替(100円などの定額で販売され、送金先に郵送して郵便局で換金できる簡易小切手)の手数料が、民営化前は10円だったのが100円になったのは、同人誌作りをする人たちの間では有名な話です。今後も色々なサービスが値上げされるのではないかと危惧しています。
 独占状態を止めれば、民営化しなくてもコストダウンが期待できます。競合する事業においてはサービスの受益者を減らさないために努力するからです。なので必要なのは民営化よりも規制緩和なわけです。

 では、こうして節約して残ったお金はどうすればよいのでしょう。やはり将来のために貯めておくのが一番だと思います。しかし国や自治体の決算は単年度会計であり、与えられた予算はその年度の内に使い切らなければなりません。とはいえ、繰越制度や債務負担行為、継続費などのような例外制度もあるのだから、お金は残しておいても何も問題はないわけです。あくまで手元にお金を残しておきたくないのであれば、不動産や株式などを購入すればいいわけです。
 一方、国民(住民)も「お金が余るなら減税しろ」という要求は出さずに、「将来のために貯めておく」ことの重要性を理解する必要があります。もっとも、国やほとんどの自治体ではお金を貯めるより前に借金を返すのが先決なのですが・・・

国も地方も個人も、今お金を貯めないと将来大変です。

[最終更新日 2015.7.15]