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裸の歯

旅行記・熊野伊勢編

去年の5月の旅行のことをいまさら書くのも変なのですが。とりあえず。

玉置神社

 奈良県の十津川村に玉置神社という神社があります。呼吸に関するサイトを調べているときに見つけたページのエッセイを読んで、どうしても行きたくなってしまったのです。
 2003年5月は仕事がかなり忙しくてかなり「うつ」の状態になっていたため、会社から1週間のお休みをもらったのです。そこでこの休みを利用してこの神社に行こう、と思ったのです。
 いや、実際は「行こうと思った」というよりは「神社に呼ばれた気がした」という感じでした。なんとなくですが。
 出発は火曜日。事前準備はYahoo!の路線情報と、十津川村の地図と、バスの時刻表を調べたことだけ。しかも路線情報は到着時刻指定をせずに検索したのですっごくいい加減な情報しか持っていませんでした。

 東京のJR十条駅から新宿経由で東京駅へ。そして新幹線で京都まで(11:13~13:34)。新幹線に乗っている間にその後の時刻表を確認。
 JR五条駅からの十津川温泉行きバスの終発が16時6分で、新幹線が京都に着くのは13時34分。このときは「2時間半もあれば余裕だな」と思っていたのです。がしかし。五条駅着の電車は1時間に1本だし意外と遠い。間に合うかどうかかなりドキドキしてきました。
 京都から奈良へ出て(13:50~14:31)、和歌山行きのJR桜井線を使って五条駅へ(14:38~16:01)。16時1分着。ぎりぎりセーフ。そして数分遅れて到着したバスに乗り終点の十津川温泉へ(16:06~18:59)。バスには僕と運転手さんの2人だけでした。持ってきた小説は読みきっちゃうし・・・
 十津川温泉から玉置神社までは車で30分。徒歩だと3時間以上かかります。なのでこの日はここで一休みしようと思い、バス停前にあった雑貨屋さんで泊まれる旅館があるかどうか聞いてみました。
 「週末ならどの旅館も開いているけど、平日だと開いていないかも」
 なんですと!? 旅館無かったらこの場で野宿ですか!?
 ・・・旅館数件に電話で確認してもらい、なんとか泊まる場所を見つけました。もちろん客は僕1人でした・・・

 ゑびす荘

 水曜日。朝食をとった後で「もう1泊するから荷物を預かって」と頼み、財布だけを持って玉置山を登りました。途中の自動販売機で飲み物を買えばよかったのに何も買わず、黙々と登り続けます。もちろん昼食も買っていません。
 水無しの登山は無謀です。みんなは真似しないように。
 延々と続くアスファルトの道路。途中たまにすれ違う車。僕はだんだん不安になってきました。この神社に来るきっかけになったエッセイの一説が頭をよぎります。
 「昔からこの山は登る人を選ぶと言われている」
 「この山に縁のある人は厳しく扱われ、何度登ろうとチャレンジしても登ることが出来ないらしい」
 「精進潔斎、斎戒沐浴を強いられ、ひたすら心を浄化せねば参拝のお許しがでない」
 日が暮れるまでたどり着けなかったらどうしよう。あわあわ。
 ですが11時半には神社にたどり着きました。「呼ばれていた」のか、「山の禽獣と同じ扱い」だったのは謎ですが。
 山頂に近づいていくと、いつからかは分かりませんが急に空気が濃くなっていたのが印象的でした。森気というか、神気というか。まるで見えない結界の内に入ったかのようです。

 100mくらいの長さのつり橋 玉置山

 山頂まで行き、すべての社に参拝してきました。この神社の祭神は「国之常立神(くにのとこたちのかみ)」「伊耶那岐命」「伊耶那美命」「天照大御神」「神日本磐余彦命(かむやまといわれびこのみこと)」の五柱です。
 参拝の後神主さんに御水とお茶菓子をもらい、1時間ほどお話を聞きました。聞いたお話はいろいろとありました。ちょっとした機転と強い意志の力で成功した人のお話とか。忘れてしまったことも多いのですがこれだけははっきりと覚えている、という話があります。
 「時代は繰り返す。一億総中流時代は終わり、貧富の差が再び激しくなる」

 玉置神社入り口 玉置神社鳥居

 帰りは、行きで痛めた足を引きずるように山を降りました。体重がかかるたびに、どちらの足もずきずき痛みます。途中で足をつりそうになったけどなんとか独力で宿まで戻れました。
 次に来るときは車で来よう、とこのとき思いました。「二度と来ない」とは思わなかったのが不思議なところ。たぶん、この神社にはいつかまた来ると思います・・・

 溶岩の岩肌 苔むす岩

熊野三山

 木曜日。JR新宮駅行きのバスに乗り、これからどうしようかと考えているときでした。
 「熊野に三度、伊勢に七度。いずれ欠けても片参り・・・」
 バスのアナウンステープが再生され、この言葉を聴きました。運転手さんにこのバスが熊野本宮を通過することを聞いた僕は途中下車し、熊野の神社を巡ろうと思ったのです。
 熊野の神社は本宮大社、速玉大社、那智大社で三位一体。どの神社も優劣無く尊いものとされているそうです。神仏混淆の影響を受けており、柱が朱塗りだったりして派手目なのが特徴でしょうか。

 午前中に本宮大社を見て回りました。本宮町は十津川村とは違ってかなり観光地っぽい感じの町。神社前の道路は車も多くてうるさかったのですが、神社の敷地内に入ると急に静かになりました。不思議。でもすごく心地よい。
 この本宮大社の御神木は杉。偉大な生命力を感じさせてくれます。

 熊野本宮 熊野本宮鳥居 杉の森 やたがらす

 正午頃着のバスに乗って熊野権現前まで。ここ(新宮市)の町並みは普通の住宅街という感じ。銀行もちゃんとあるし。
 急いで見て回ったせいで記憶も薄いので写真だけ並べてごまかしちゃいます。個人的には橋が印象的でした。この橋より奥へは馬に乗ったまま入ってはいけないのだそうです。
 速玉大社の御神木は梛(なぎ)。ここで某マンガ(銀のトゲ)の登場人物を思い出してしまうあたりがオタクですね・・・

 熊野速玉大社 梛の大木 下馬橋

 権現前で那智駅経由勝浦行きのバスに乗り、那智駅前で降りて別のバスで那智大社へ。到着はほぼ15時半。ここは那智大社のほかに青岸渡寺や那智大滝(飛瀧神社)、ちょっと遠いけど阿弥陀寺や展望台があり、見所が多い場所です。でもバスの時間の都合で阿弥陀寺を見るのは断念。この付近もやはり車で観光するのが一番のようです・・・
 そして・・・この神社はとにかく階段が多い。昨日今日と歩きっぱなしだった僕にとってはかなりの苦行でした。
 那智大社の御神木は楠(くす)。たまに名字で見かける字ですね。

 見た目お寺みたいな那智駅 那智大社の階段 那智大社の鳥居 楠の大木 人間らしく 阿弥陀如来 竹林 那智大滝

 バスで勝浦に行き、ホテルの場所を教えてもらってそこで宿泊。勝浦では名物を食べようということで、ホテルでめはり寿司と鯨の刺身を頼んでみました。これで合わせて2000円。もちろん鯨のほうが高い・・・

 めはり寿司と鯨の刺身

伊勢七宮

 金曜日。勝浦からJRで伊勢に行き、昼から皇大神宮(内宮)、豊受大神宮(外宮)、月読宮、倭姫宮、月夜見宮と、猿田彦神社を回ってきました。かなりの強行軍です。で、やっぱり今日も歩きっぱなし。もう常に足の裏が痛い。
 伊勢市の内宮と外宮は有名で、これは一対でひとつの神社として信仰されているみたいですね。そしてその他に五つの別宮があり、合わせて伊勢の七宮になります。
 伊勢の神社は神仏混淆の影響を受けていないので、とてもシンプル。鳥居も木を削ってそのまま使う(何も塗らない)質素なつくりです。写真はいっぱい撮ったのですが、どの神社も見た目がほとんど同じなので写真載せようかどうかかなり悩みました・・・

 まずは内宮。神社の敷地のあちこちに神社があり、ちょっとした迷路みたい。
 一通りぐるりと巡ったあとで皇大神宮へ。大神宮は白い布幕が張ってあってあまり奥は見えないのですが、かなり奥のほうに社が見えます。正装している人であればお金を払えば中にある神社に直接お参りできるみたいです。てわけで、伊勢に行くときはスーツ着ていくのを推奨します。

 内宮鳥居 鳥居にくくりつけられた榊 正殿 神楽殿 瀧祭神 荒祭宮 御稲御倉 五十鈴川 神宮司庁 大山祇神社 子安神社 響土橋姫神社

 次いで猿田彦神社。同じ敷地内に佐瑠女神社もあります。猿田彦神は交通安全に関する神様だそうで、自転車用の反射板を売っていたので買ってきました。
 佐瑠女神社に祀られている天宇受売命(あめのうずめのみこと)は踊りの神様。僕が行ったときには御祓いを受けにきた人がいたので、神楽舞を舞う巫女さんを見ることができました。なんか幻想的でした。

 狛犬 猿田彦神社 佐瑠女神社

 その次に回ったのは「月読宮」「倭姫宮」。月読宮は「ツクヨミ」神を祀っている神社なのですが、もうひとつ「月夜見宮」という神社もあるのです。なので月読は「げつどく」、月夜見は「よるけん」と呼んで区別するのだそうです。
 伊勢神宮の神社には「古殿地」というものがあります。神社と同じ広さの土地を確保し、小さな社が中央に置かれています。これらの神社は20年に1回建て直し、そのたびに古殿地と神社とが入れ替わるのだそうです。
 この建て直しは「生命の再生」「生まれ変わり」の象徴だそうです。

 月読宮 月読尊荒御魂宮 伊耶那岐宮 伊耶那美宮 藤原神社 巨大鳥居 倭姫宮 倭姫宮古殿地

 その後バスに乗って伊勢市中心部に戻り、月夜見宮と外宮を見に行きました。夜7時になると門が閉められて入れなくなるそうなので大急ぎで。
 月夜見宮では特に熱心にお祈りを。「私は月の民でございます・・・」心が不安定に満ち欠けし、自らが光り輝くことは無く、熱の無い光。それが僕なのだと感じ、見守ってくれるよう祈ったのです。

 月夜見宮(正面) 月夜見宮(横) 月夜見宮鳥居

 豊受大神宮もまた白い布幕が張っていて、遠くからは奥が見えないようになっています。内側での写真撮影は禁止されている(内宮も同じ)のでちょっと遠くから写真を撮りました。

 外宮の橋 外宮の鳥居 九丈殿と五丈殿 外宮の神楽殿 外宮の木 外宮正殿 土宮 風宮 多賀宮

 土曜日。残るは伊雑宮と滝原宮。
 ですが台風4号の影響でJRがストップ。伊雑宮は私鉄なので行けましたが、滝原宮は無理っぽい。早く復旧してくれと祈るのですが、昼になっても復旧のめど立たず。どうしよう・・・

 伊雑宮 伊雑宮社務所 伊雑宮の池 宮川増水により参宮線伊勢市~多気間運転を見合わせております。あらかじめ御承知下さい。駅長

 JRが動かないならバスを使ったらいいのでは?
 とひらめいた僕は近鉄を使って松坂へ。松坂発の瀧原宮前行きのバスに賭けてみることにしたのです。
 ところがバスもストップしているらしい・・・
 台風は通り過ぎて晴れているのに・・・
 やきもきしながらも16時頃バスが復旧し、早速乗り込んで滝原宮へ。そして「熊野に三度、伊勢に七度」達成。よかったぁ・・・

 瀧原宮鳥居 瀧原宮 瀧原竝宮 長由介神社

 帰りはダイヤが大幅に遅れていたもののJRが復旧していたのでそれに乗って伊勢市に戻りました。そして伊勢発東京行きの深夜バスに乗って池袋へ。

 最初の準備が「玉置神社に行くだけ」だった割に、ずいぶんあちこち巡って帰ってきました。まさか熊野と伊勢の両方を見て回るとは思っておらず。かなり充実した1週間であったと思います。高野山とか、見て回りたい場所は他にもあるのでお金に余裕ができたらまた行って見たいと思っています。

次来るときは玉置神社と高野山を巡ろうと思います・・・

[最終更新日 2015.7.15]