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裸の歯

新しい差別の構図

 今回どうも調子が悪く、上から見下ろす感じで文章を書いてしまっているように思えてなりません。不快な点などがありましたら訂正しますので、下記連絡先までご連絡ください。

 2005年2月2日、帰宅途中のこと。ホームレスの女性が電車に乗ってきて、洗濯していない服と洗っていない体から、くさやの干物のようなにおいが車内に充満し始めました。
 周囲の人たちが「2ヶ月以上は風呂に入っていないみたいだ」とか、色々とうわさしているのを聞いていたのですが、僕はその匂いの発生源には全然気づかず。また気づいたとしても特に気にはしなかったと思います。・・・しかし。
 業を煮やした乗客(おじさん)の1人が、電車が止まったときに「ばあさん、臭くて迷惑だから電車から降りろ」と怒鳴りました。彼女は悲しそうに電車を降りていきました。その後の車内の様子はどちらかというと「よく言ってくれた」と感謝する声のほうが多く、僕はとても違和感を感じました。
 電車というのはそもそも「お金を払い、迷惑行為(痴漢、暴力、破壊など)さえしなければ誰でも乗れる」はずです。「匂い」は「迷惑行為」なんでしょうか・・・

想像してみてください

 もし会社が倒産したり、リストラされたりして職を失い、再就職先が見つからず、失業保険(失業2か月後から6か月支給)も途絶えてしまったら。頼れる親や子、親戚がいれば何とかなるかもしれませんが、もし誰もいなかったら。
 「好きでホームレスになったわけではない」「わいらはホームレスじゃない、『失業者』や」と言う人もいます。ホームレスになりたくてなった人はほとんどいないと思います。なりたくなかったのになってしまった人が大半でしょう。
 自分がホームレスになる可能性を、考えてみてください。よほど仕事ができる人でなければ、ゼロではないと思います。しかも本人がどんなに頑張っても、会社が倒産する事もありえます。いわゆるニートの方々も、もし親がいなければホームレスになる可能性はかなり高いのです。
 もし自分がホームレスになったら、どのように接して欲しいと思いますか。そう考えれば、罵倒したり暴力をふるったりすることはできないと思います。プライドが高い人もいるので、必ずしも援助をするのが一番では無いのが難しいところですが・・・

自治体の無策

 ホームレスの方が死亡すると、葬儀代等は全て死んだ場所の自治体役所が支払うようです。そのため、役所では電車賃を手渡して他の自治体に行くことをうながすことがあるそうです。
 事なかれ主義ここに極まれり。行政として、他にできることがあるんじゃないでしょうか。というか、本来公務員は「困っている市民のために何かをする」のが仕事、まさに「公の務め」なのではないでしょうか。
 こういうことを考えるとき、「政治家になりたい」と思うことがあります。自分なら役に立てるはず、と思うのです。実際は色々と制約などがあったりして難しいのかも知れませんが。

どうすればいいのだろう

 おそらく彼女も居場所を追われ、別の土地に向かう途中だったようですが、こうも邪魔者扱いされるところは始めて見ました。
 状況を見守るしかなかった僕自身も反省しています。きっと何かできる事はあったはずなのに。なんか・・・すごく悔しかったです。でも、声をかけたほうが良かったとは限らないのが困りどころなのですが・・・
 いわゆるボランティアには、被災地や外国への援助を行う団体は数多くあっても、ホームレスに対して援助を行う団体はあまりありません。そういう数少ない団体に資金提供するとか、実際に参加するとか、政治家に陳情して税金を使ってもらうとか、(かなり難しいけど)いっそ政治家になって税金を投入するとか、手段は色々とあります。
 何かしたい、とは思うんです。でも物を盗まれるのは怖いので「ホームレスの人を家に連れてきてお風呂を使ってもらって服を洗濯してあげる」ことはさすがにできません。僕には何ができるのでしょう・・・

ホームレス特区

 大阪の釜ケ崎、東京の山谷、横浜の寿町など、日本各地に「ドヤ」と呼ばれる低価格の宿泊所があるそうです。しかし低価格とはいえお金がかかるので、ドヤにすら泊まれない人もいるのだと聞きます。
 ドヤを無料にできれば、シャワーや洗濯機を無料にできれば、無料で炊き出しを支給することができれば。税金は本来こういうことのために使うものなのではないでしょうか。ご立派な建物や無駄な道路工事に使う費用の数分の一程度でできることです。特に都心には、ドーナツ化現象で使わなくなった公立学校が多数あるので、土地の確保も容易だと思います。
 それとあと。ホームレスを隔離するのではなく、労働力にするための場所が必要なのではないかと思います。職業訓練や仕事の斡旋など、政令指定都市に1つずつ程度そういう場所があれば、十分にまかないきれると思います。

人は被差別階級を必要としているのか

 それほど多くの予算を使わずに対応できるはずの「ホームレス対策」が、行われていないのは何か理由があるのでしょうか。「ホームレス」という存在を必要としている誰かがいるのではないかと思ってしまいます。
 例えば江戸時代、「えた」「非人」という階級がありました。犯罪者やその子孫などがそう呼ばれ、士農工商の階級の下に位置づけられていました。彼らは家禄を継げない貧乏な武士の次男三男や、厳しい課税に苦しんでいた農民からさげすまれるために作られた階級であり、いわば「下には下がいる」と思わせるための階級であったように思えます。農民等の一揆を防ぎ、不満を抑えるために「下には下がいる」と思わせる政策は、国を安定させるための必要悪だったのかも知れません。
 明治時代には「士農工商」も「えた」「非人」も等しく「平民」となり、制度上は「平等」になったはずですが、差別はまだ残っています。それでも最近は差別をなくすための教育がなされており、少しずつ差別は減ってきていると思います。

被差別階級が必要なのは一部の議員や官僚ではないのか

 最近は、普通の会社員や主婦、学生などにも「政治や経済に興味を持つ人」が増えつつあると思います。そして「どこかおかしい」と気づく人も増えてきています。
 族議員が官僚や特定企業と癒着し、一部の階級だけが優遇される政治に対して、一般市民は疑問を持ち始めています。それを防ぐために誰かが話題にし、被差別階級を作り上げてしまったのではないかと思えてなりません。
 「ホームレス」や「ニート」は、バブル経済の頃にも少数ながら存在していたはずです。でもその頃は誰もその存在を気に止めていませんでした。うなぎのぼりに高騰する土地や株価に気をとられ、目を向ける人が誰もいなかっただけで。
 バブル経済が終わって、好況不況は繰り返しているものの長く停滞した経済状態になり、ホームレスになる人も増えたから話題になるようになったのでしょう。しかし、実際には政治や経済上の都合で増えた存在であるにも関わらず、「本人が悪い」という論がまかり通ってしまうのはおかしいと思うのです。これでは江戸時代の差別と大差ありません。
 もっと本質を見つめて、「なぜホームレスが増えたのか」を考える人がもっと増えて欲しいと思います。経済的事情だけではない、何かがあるはずです。それが何なのかはおぼろげにしかわかりませんが・・・

ところで、ホームレスって実際は「ルームレス」ではないかと思うんですが?

[最終更新日 2015.7.15]