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第6章:「白の魔王」

 あるところに、1人の魔法使いがいた。
 その魔法使いは、人が人と争い、魔物とも争い、戦乱の末に疲弊していくこの世界を嘆いた。
 そこで魔法使いは、(今は「原初の島」と呼ばれる)小さな島に自分の国を作ることにした。魔法の結界に守られた、小さな国を。
 数人の仲間たちと作り上げた小さな国は、平和な国となった。この国の名は「アルブム・ベネディクタ」。祝福された白、という意味である。国王となった魔法使いは、自らも国の名と同じ名を名乗るようになった。
 アルブム・ベネディクタには、平和な国があるという噂を聞きつけた人々が集い、小さな国は少しずつ大きくなっていった。周辺の島を開拓し、国土の拡大とともに結界を拡大する必要に迫られ、たくさんの魔法使いを招き入れ、厚遇した。

 他の国々の王たちは、この新しい国をねたむようになった。そのためアルブム・ベネディクタは幾度と無く戦争を仕掛けられたが、結界は揺るがなかった。そもそも、結界にたどり着く前に魔法によって作られた津波で難破する船が大半であったとも言われている。
 国王アルブムは、戦争によって疲弊する相手の国を嘆いた。すべての人々が平和を享受するために何ができるかを考えた。答えは簡単だった。
 それは、「世界中のすべての国を併合すること」。

 国王アルブムは、大陸の4分の1を占める世界最大の帝国に併合を勧める文書を送り、帝国はこの無礼への返答として、使者の両腕を切り落として送り返した。
 帝国はすかさず10万の兵を集め、アルブム・ベネディクタへ侵攻を開始した。だが、いつもこの国を覆っていた結界は力が失われていた。帝国の将軍は結界を維持していた魔法使いたちが逃げ出したと思い込み、魔法使いたちを捕らえるよう命じた。兵たちは陣形を崩して我先と城壁に突撃を始めた。
 そのとき、空中から1000人の魔法使いたちが現れ、兵たちを一瞬のうちに焼き払った。帝国の将軍は何が起こったのかを理解できないまま絶命した。
 この戦争は、千人戦争という名で歴史に刻まれている。
 世界最大の帝国が敗れたことにより、アルブム・ベネディクタに対する各国の態度は急変する。併合の使者が訪れた国は唯々諾々と従い、魔物や他国などの脅威から身を守るため自ら軍門に下る国も現れた。
 こうしてアルブム・ベネディクタは人間が住む土地のすべてを手に入れた。人々は戦争をしなくなり、結界によって魔物たちからも守られた

 国王アルブムは、初めて心が満たされた。だが、今度は自分の体の異変に気づいた。強すぎる魔力によって不老不死となったばかりか、体から魔力があふれ出し、周りに悪影響を与えてしまうようになってしまったのだ。
 そこで国王アルブムは世界の狭間に空間を作り、自分だけが住む城「狭間の城」を築き上げた。さみしいとは感じたが、自分が世界を壊すということには耐えられなかった。魔法によって通信を行えば王としての仕事は問題なく行える。だから勝ち取った平和は永遠に続くと思いこんでいた
 だが、国王アルブムが異世界に退いて数百年の後に、利己的な感情を抱いた者たちによって大規模なクーデターが起こった。魔法使いたちの一部すら取り込んだこのクーデターにより、万単位の人が死に、いくつもの町にも傷跡を残した。
 国王アルブムは絶望した。人とは所詮「争う者」であり、平和を望むことはできないというのか。では、人を信じることができなければ、何を信じればいいのか。
 答えは、「魔物」たちだった。魔物は暴力的ではあるが、強い者には服従する。力を示し続けさえすれば、人間たちのように裏切ることはない。人間たちよりもずっと純粋な存在ではないか。

 アルブムは世界中に人類を滅ぼすことを宣言し、人間の領土を守る結界を一方的に解いてしまった。そして魔物たちの攻撃が一斉に始まり、街道を含むほとんどの領土と人口の半分を失ってしまった。魔法使いたちによる小さく弱い結界や兵士によって町を守ることはできているが、交易は途絶え、孤立したまま滅ぼされる村もある。
 アルブムの宣言から、5年後。絶望的な状況の中で、人心は荒廃しはじめており。ある者は白の魔王と化したアルブムを倒す者を求め、またある者はアルブムが再び人間を守る存在に戻ってくれることを求めている。
 きみは、この絶望的な状況を打破すべく立ち上がった者の1人である。

PCたちの目的

 PCたちは、人心が荒廃しつつある現状を嘆いて、打破すべく立ち上がった「英雄(候補)」になります。
 そのため、「なるべく人心が荒廃しないような方法で」事件を解決する必要があります。犠牲者をなるべく減らし、困難に対して率先して立ち向かう必要があります。これを表現するため、キャラクター作成・再調整のルールに若干の修正が加わります。

荒廃度

 「白の魔王」世界において、人心の荒廃がどの程度進んでいるかを表現する値として、「荒廃度」を設定しています。
 これは「0~100」の間になり、PCたちの行動によって、1セッションで-5~+10の間だけ変動します。単発で遊ぶ場合には変動した後の値を使用する機会はありませんが、変動量に合わせてもらえる経験点の量が変化するため、なるべく「荒廃度を下げる」よう、努力してください。
 なお、キャンペーンを開始するときの荒廃度は、長期間遊ぶのであれば70にするのをお勧めします。荒廃度が0または100になると、キャンペーン完結です。

[表部分はスクロールが可能です]

荒廃度レギュレーション状態
作成時レベル上限
平和(グッドエンド)白の魔王が改心し、または倒され、世界に平和がもたらされる。PCたちは「平和をもたらした英雄」としてたたえられる。ただし、白の魔王を倒した場合、新しい秩序を構築する必要がある。
 1~ 9超人33白の魔王が住む「狭間の城」への入り口である「原初の島」周辺の群島を除き、ほぼ平和を取り戻している。
10~19超人30白の魔王側の拠点のうち半数以上を奪回し、拠点の近くでなければ警護無しで安全に街道を通行できる。現代日本レベルの治安の高さ。
20~29英雄27白の魔王側の拠点のうち一部を奪回し、人々が活気付く。街中は現代日本レベルの治安の高さ(女性や子供でも夜に外を出歩ける)だが、夜の街道には危険が残る。
30~39英雄24白の魔王側は強力な存在とその配下以外のほとんどを失い、情報交換や通商が(まだ護衛が必要ではあるが)スムーズに行われるようになる。
40~49一流21夜であっても、成人男性であれば街中を出歩けるくらいにまで治安が回復する。一般住民も噂レベルでだが、周辺の情報を入手することができる。
50~59一流18街道の警備も行われるようになり、昼間であれば比較的安全に通行できる。情報交換や通商も行われるようになり、上層部が情報を共有できるようになる。
60~69有能15街中の警備が行われるようになり、危険ではあるものの夜に出歩くことができるようになる。ただし、情報交換や通商は滞りがちである。
70~79有能12秩序が乱れた状態。外からの魔物の脅威に対抗するので精一杯で、建物の中は比較的安全だが、夜の街中は危険地帯と化す。情報交換や通商がほとんど無い。
80~89一般人秩序がかなり乱れた状態。もはや街中ですら安全ではなく、あらゆる犯罪が横行している。宿に泊まるときに見張りが必要。
90~99一般人人間社会は崩壊しており、廃墟と化した街中を魔物が跋扈している。実力ある人間たちのほとんどが倒されるか、白の魔王側に寝返っている。
100崩壊(バッドエンド)人類が全滅する。PCたちも例外ではない。白の魔王は永遠のむなしい満足を得る。

 「レベル上限」を超えるPCを持ち込む、または使い続ける場合、「第1章:キャラクター」のキャラクター再調整手順に従って、経験点を譲渡してください。

荒廃度の変動量

[表部分はスクロールが可能です]

変動量評価
-5~-2犠牲者ゼロ、または味方を増やすなど、期待される以上の成果を得た
-1犠牲者をなるべく減らし、困難に対して率先して立ち向かった(通常のセッション)
±0~+2必要以上の犠牲者が出た、または積極的に事件を解決しようとしなかった
+3~+5PCたち自身が犠牲者を増やしたり、人心を荒廃させたりするようなことをした
(上記に加えてさらに)+5事件を解決することができなかった

 荒廃度が変動した場合、追加で「(荒廃度の変動量)×(-20)点」の経験点を獲得します。これは「特別ボーナス」としてください。
 ただし、(改心させる、倒す、その他の方法をとる、などにより)「白の魔王」という存在を消し去ることができなければ、荒廃度の下限は1になります。変動量の値にも影響を与えます(例えば、荒廃度2のときに変動量-5に相当する活躍をしても、変動量は-1とみなします)
 「白の魔王」という存在を消し去ることができた場合、無条件で荒廃度0になります。「荒廃度」が6以上のときは、-5以上の変動量を得ることもありえます(例えば、荒廃度22のときに「白の魔王」を改心すると、変動量は-22になります)
 なお、これによって「獲得経験点」の「総計」がマイナスになることはありません。また、今回のセッションで得た経験点のうち、既に使用済みの経験点がある場合、使用済み分を減らされることはありません。

目次

第1節:キャラクター
キャラクターの作成に関する追加ルール。
第2節:ワールド
「白の魔法」が統べる世界に関する解説。

[最終更新日 2015.7.15]